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東野圭吾のデビュー作「放課後」を読む [本]

放課後 (講談社文庫)
放課後 東野圭吾著

「放課後」は,江戸川乱歩賞を受賞した,東野圭吾のデビュー作。実はこの前に,「魔球」など2作品で江戸川乱歩賞候補に上がっているので,最初の作品ということではないようだ。「魔球」がデビュー前の作品だということには正直驚く。「放課後」は1985年に発表されているので,もう22年も前の作品だ。女子高校が舞台になっており,「青春ミステリー」なんて言い方もされるらしい。ここ十数年の作風やタッチとはちょっと違う印象を受けた。

ストーリーは,主人公である女子校の数学教師・前島の視点で描かれ,冒頭,校内で何者かに命を狙われるところから始まる。続いて同僚の教師が2人立て続けに殺され,警察や生徒,前島を巻き込んで犯人捜しが行われるというもの。そこに,前島と,不良として目を付けられている女生徒や,前島が顧問を務めるアーチェリー部員の女生徒との微妙な人間関係が絡んでくる。女子校という設定ではあるが,教師と生徒との距離感というのはこんなもんだったろうかと,遠い昔を思い出しつつも,若干違和感を感じながら読んだ。高校生くらいって,自分では一人前のつもりでも,大人からはまだまだ子供っぽい言動に見えてしまうものだと思うが,この作品からはそういう部分があまり感じられなかった。

一般的なミステリーのように,密室のトリックの巧妙さに強く拘っている辺りが,最近の作風とは違うところだろうか。ただ,あまりテーマ性は感じないが,主要人物の人間性や感情の動きに関わることが,ストーリーに合わせてかなり細かく描写されている点は,今の作品にも通じている。そこが,ありきたりのミステリーに終わらせていないポイントなのだろう。そういう意味では,殺人の動機は重要な要素であり,高校生くらいの女子がどういう場合に殺意を抱くのか,という微妙な問題へのひとつの答となっているはずなのだが,正直いって,ちょっと納得しにくいものではあった。とはいえ,大人が殺意を抱く動機と,子供が殺意を抱く動機には,本質的な違いがある,という点については興味深い指摘だと思う。

ショックだったのはラストである。今思えば,それは大人と子供の動機の対比をも暗示していたのかも知れないが,これはこれで殺人にまで至るような動機とはちょっと考えにくい。確かにとんでもないヤツだとは思うが,ふつうの大人はこんな破滅的な解決策には出ないのではないかと。

そんなわけで,いつもと違って異議を感じる部分もあったが,推理以外の点でもいろいろ考えさせられたし,十分楽しめる作品であった。


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