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まるで自己啓発本のような「生命の暗号」 [本]

〔文庫〕生命の暗号 (サンマーク文庫)
村上和雄著「生命の暗号」。

例によって,Amazon.co.jpのKindle本セールで,面白そうだなと思って購入した,村上和雄氏の「生命の暗号」。私は理系の人間なので,遺伝子に纏わる科学的な知識を得られることを期待して読み始めたのだが,どうも様子がおかしい。人間の身体は,遺伝子という設計図から作られるが,ポジティブな考え方が遺伝子に影響を与え,それが潜在的な能力の発現を促し,人生は良い方向に向かって行く...って,これって自己啓発本だったのか? それでも,少しくらいそういう話が混じっていても良いが,結局全編,同じ主張の繰り返し。著者自身の経験や,偉人の伝記を引き合いに出し,その主張の正しさを論じているのである。

勿論,それが何らかの科学的な実験結果や観測結果に基づいているものなら文句はないが,筆者がそう確信している,というだけの状況証拠的なもの。ポジティブ思考が,様々なプラスの精神作用をもたらすこと自体は否定しないが,それを一足飛びに,遺伝子への影響に結びつけるのは,飛躍が大き過ぎる。

そもそも,自己啓発本のようなものが大嫌いなので,そうと分かっていれば読まなかった。しかし,「生命の暗号」というタイトルから,誰がそんな内容を想像するだろうか。確かに,商品ページに載っている目次の抜粋を今見れば,怪しい匂いがプンプンしてはいる。勝手にブルーバックスのような本だと思い込んでしまったこちらにも,責任の一端はあるのだが...。

そんな訳で,これから科学的知識欲に駆られてこの本を手にする人は,用心すべし。


所詮フィクションだから,でよいのか? [本]

ゴールデンスランバー (新潮文庫)
伊坂幸太郎著「ゴールデン・スランバー」

ひと月ほど前,AmazonのKindle本セールで購入した,伊坂幸太郎の「ゴールデン・スランバー」を読了。

ある日突然,身に覚えもない首相殺しの犯人に仕立て上げられてしまう男のお話。伊坂氏の本は「魔王」以来。「魔王」の感想でも書いたが,伊坂氏の作風というか文体には,やはり妙な違和感を感じる。この作品の場合,時系列が唐突に入れ替わるのがとても気になった。そのせいか,今ひとつ読む速度にスピードが乗らない。話としては,間違いなく面白いと思うのだが,これはもう相性というしかないだろう。

無実の罪を着せられた主人公の逃避行,と言ってしまうと,ありきたりではある。事件の黒幕と思われる政治権力の身勝手さと,その意向で動く警察権力の横暴さ,理不尽さ。そして,必ずしも真実を報道しているとは限らないマスコミ。現実の社会問題としては見過ごせないものだが,小説の題材としては特に目新しくもない。もうひとつキー・トピックは,国家による国民の行動監視,だろうか。確かに,最近の警察の動きを見ていると,いかにもそういうシステムを導入したくてウズウズしているようには見える。

ただ,残念なことに,この作品の世界は明らかにフィクションなのだ。ただの作り話というだけでなくて,社会システムの設定が虚構なのである。個人的には,そこが極めて残念。とても重大な社会問題を扱っているのに,話全体の現実感が損なわれてしまうのだ。読み終えた後の読者に,「所詮,フィクションだから」という印象を与えてしまいかねない。

勿論,ドキュメンタリーではないのだから,架空の設定を行うのは仕方がない。しかし,それは必要最小限に留めて欲しかった。選挙制度の仕組みを,現実と違うものにする必要が果たしてあったのだろうか。いくら特殊な状況だからといって,警察が街中で銃を乱射することがあり得るだろうか。そういう設定にする必要は何だったのだろう。セキュリティ・ポッドの設定も,行き過ぎなように思える。もう少し現実的なレベルに抑えられなかったのだろうか。ここまで個人情報を好き勝手に収集するシステムなんて,現実に導入される可能性を誰も信じないだろう。警鐘を鳴らしたかったのだと思うが,これでは逆効果である。

発表作品が常に話題になる人気作家なので,こういう問題提起をしてくれるのは,社会的に意義のあることだと思う。ただ,それが効果的に伝わらないとしたら,勿体ない気がしてならない。


フィクションの境界 [本]

夢幻花(むげんばな)
東野圭吾著「夢幻花」

東野圭吾の最新刊,「夢幻花」読了。

黄色い朝顔をめぐるミステリー。朝顔には黄色の花を付ける種類は現存しないそうだ。江戸時代にはあったのだが,どういう理由か絶えてしまったらしい。以来,黄色い朝顔を再現しようと,様々な努力がなされてきたが,未だ成功には至っていないのだとか。恐らく,そこから先が,東野氏による創作なのだと思うが,どこからがフィクションなのか分からないという,見事なフィクションである。どうせフィクションなのだからと,科学的な説明をおろそかにする作家も多いようだが,そこは理系出身の東野氏ならではの精密さだ。しっかりとした調査・取材をしているのだろうと想像が付く。やはり,プロはこうあるべきだろう。

ストーリーの構成が,これまた秀逸。出足から,繋がりの見えないいくつかのエピソードが紹介されて,当然どこかで繋がっていくのだろうと思いつつも,終盤に至るまで見えてこない。しかし,それらを漏らさず,最後に一本の糸により纏めてしまう技術は見事である。

ただ,私の好きな,社会問題を扱う作品ではないので,内容的には薄い感じはする。若干,若者向けの説教くさいテーマも読み取れるが,さすがにこの歳では響いてこない。まぁ,そんな面倒臭いことを考えず,読み物として楽しむには何の問題もないだろう。GWの終盤,特に出掛ける予定がないのなら,自宅で爽やかな5月の風を感じながら,読書に耽るのもよいのではないだろうか。


「脳男」に感動なし [本]

脳男 (講談社文庫)
首藤瓜於著「脳男」

Twitterにも書いたが,首藤瓜於の「脳男」を読んだ。

映画になったということで話題になってたのと,江戸川乱歩賞受賞作ってことで,ちょっと前から気にはなっていた。しかし,Amazonのレビューを見ると,あまり好意的なコメントが載ってない。評判が悪いものを,わざわざ読んで時間を無駄にすることはないかと思って,やめたのである。それを翻すことになったのは,Koboの500円クーポン。2枚あって,1枚はすぐに使い途が決まったのだが,もう1枚に困ってしまった。しかも,気が付いたのが,クーポンに書いてあった期限が切れたあと。慌てて1枚目を試してみたらまだ使えたので,残り1枚も早く使ってしまいたい。そんな訳で,すぐに思いついた「脳男」を購入した訳である。といっても,クーポンの額面ぴったりだったので,支払いは0円。

ちょうど「正義のセ」の2冊めを読み終わって区切りも良かったので,すぐ読んでみることにした。で,これまた2時間ほどで読了。最近の小説って,文体がライトなせいか,読み進むのが早い。なんか損してるような気がしてしまうのは,貧乏性だろうか。

それはともかく,内容の方だが,どうも今ひとつ印象的ではない。まず,そもそも「脳男」って何なのか。結局,読み終わってもよく分からなかった。生まれながらに感情がないのが脳男? 本当にそういう症例があるのか,全くのフィクションなのかもはっきりしない。フィクションなのだとしたら,もっともらしい医学的考察の部分は,著者の妄想の産物なのだろうか。逆に,実例があるのだとしたら,綿密な取材に基づいていることが分かるような記述をしてくれないと,そういう風には読み取れない。その辺が曖昧なので,理系人間の思考回路では,イマイチ白けてしまうのだ。それに,何故そういう設定が必要だったのかもよく分からない。感情がない人間の犯行だったことが分かったから,どうだったというのだろう。ミステリーには必須と思える,そういった論理性が感じられないのだ。読者の気付かぬ内に,縦横に張られた伏線,というのに唸らされることもなかった。江戸川乱歩賞の選考で絶賛されたそうだが,どの辺りが選考委員の心の琴線に触れたのだろう。私には全く想像がつかない。

さらに言えば,重要な登場人物に,全く人間的な魅力を感じられない。主人公らしき刑事は,頭脳明晰で素晴らしい推理を展開する訳でもないし,人情味溢れる熱血漢という訳でもない。ただ身体がデカくて,暴力的で粗野な感じ。ハードボイルドだとしても,主人公の器ではない。女医さんはもう少しマシかもしれないが,キャラクターに取り立てて個性が感じられないのは同様。犯人に至っては,善なのか悪なのかはっきりせず,敵役なのか同情すべき人物なのか微妙。そんな感じで,登場人物に思い入れが持てないのだ。これは,小説として致命的なことなのではなかろうか。

いくら努力しても,先に読み進めるのが困難,という作品ではないので,人によってはこういうのを面白いと感じるのかも知れない。私の読み方が良くないのかも知れない。私も,つまらない作品だとまでは言わないが,読み終わって何も残らなかったことは事実。これをこのまま映画化して,面白くなってるのだろうか。まぁ,映画は映画なりに脚色が入っているのかも知れない。ただ,原作を超える映画は記憶にないし,まず観ることはないだろうが。


「正義のセ」は肩透かし [本]

正義のセ
阿川佐和子著「正義のセ」。

阿川佐和子さんの小説,「正義のセ」を第2巻まで読了。

1月の終わりの頃だったか,TBSの「はなまるマーケット」の「はなまるカフェ」に,阿川さんがゲストで出演された時,この本が紹介されていた。女性検事が主人公の話というのは珍しいし,司法ものには元々興味がある。知り合いの女性検事がモデルになっているそうだから,単なるフィクションでなく,現実の問題を扱っているに違いない。そんな訳で,発売までを楽しみに待っていたのである。

しかし,実際に読んでみると,勝手に少しシリアスな法曹物を想像していたので,肩透かしを食らった感じ。どちらかと言えば,検事を職業としている,ごく普通の女性を日常を描いている作品だ。勿論,事件の捜査や冤罪など,司法に関わるエピソードがストーリーの中心に据えられているが,あまり深く掘り下げられてはいないので,そこに関心がある人間には,少々物足りない。言ってみれば,少し真面目なテーマの,大衆向け読み物である。

とは言え,物語としては面白いし,語り口が軽妙でテンポもいいので,すいすい読める。この辺りは,さすが阿川さん,というべきところだろう。片道1時間程度の通勤電車の往復で,1冊をほとんど読み終えられるくらいのペースと分量だ。考えてみれば,阿川さんの小説を読むのはこれが初めて。彼女のキャラクターを考えると,そんなシリアスで重厚な小説を書くとは思えないので,勘違いした自分が悪い。まぁ,他にそんな読者はいないかと思うが,何の先入観もなく読んだら,充分に楽しめる本なのだろう。

なんて書いてはみたが,買ってから読み終わるまでにだいぶ時間が開いてしまった。これは,このところプログラミング関係の本ばかり読んでいたことや,間違えて「正義のセ」の第2巻を先に買ってしまって,後からあわてて第1巻を注文したことばかりが理由ではない。第1巻を読み始めて,ようやく自分の勘違いに気付き,ちょっと意気消沈してしまったのが主な原因だ。第2巻を読みながらも,果たして続刊を買ってまで続きを読むべきか,少し悩んでいた。結果的には,第2巻がとても中途半端な気になるところで終わってしまっているので,第3巻も買うことになりそうだが,すぐに続きが読みたいという程でもない。今は,hontoの500ポイント・プレゼント・キャンペーンに合わせて,買う本が3千円分たまるまで待っているところ。

ところでこれ,全3冊で完結するのだろうか。あんまり長く続くようなら,やっぱり途中でやめようかな...。1冊1260円は,ちょっと高いし...。


「ビブリア古書堂...」の新刊は乱歩 [本]

ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)
三上延著「ビブリア古書堂の事件手帖4」。

昨日発売されたばかりの,「ビブリア古書堂の事件手帖」第4巻を読了。

Twitterにも書いたが,2/21の午前にはhontoで購入可能になっており,すぐに注文したところ,午後には発送。配送はクロネコヤマトで,時間指定はできないのだが,たまたま翌日午前に時間指定してあった荷物があり,それが9時前に到着。hontoの荷物も同時に届いた。そんな訳で,まだ近所の書店が開店する前には既に手元に。お陰で,往きの電車の中から読むことが出来た。約320ページあるので,往復では8割弱までしか読み進められず,続きを家で読むはずだったが,食事中に酒を過ごしてコロッと寝てしまい,朝になって読み切った。酒のせいで,休日だというのに早寝早起きとは,健康的なのかどうなのか。

先日3巻まで一気読みしてしまって,続きを楽しみに待っていた訳だが,その期待を裏切らず,今作もとても面白かった。本にまつわるライトなミステリーなので,気分も軽快に読むことができるし,先が気になるのでどんどん読めてしまう。せっかく楽しみにしていたのに,終わりが近付くのが残念なほど。本筋の謎解きもさることながら,メイン・キャストのプライベートなストーリーも徐々に進展して,そちらの興味も尽きない。またまた気になるところで切れてしまったが,次作は年末くらいまでに出るのだろうか。早くも待ち遠しい。小説で,こんなに続きが楽しみなのは,ブライアン・フリーマントルのチャーリー・マフィン・シリーズと小野不由美の「十二国記」くらいのものである。そのどちらも,夏くらいには新作が出ることになっているが。

ところで,本作では各話のタイトルが,鍵となる実在の本の書名になっているのだが,この第4巻では全編が「江戸川乱歩」の作品となっている。偶然にも,乱歩の初期短編などを最近読んでいたので,作中で紹介される作品や,乱歩にまつわるエピソードがとても興味深かった。子供の頃に夢中になって読んで,乱歩をよく知っているような気がしているが,実際のことは意外に知らない人が多い,というようなことが書かれていたが,自分もつい最近同じような感想を持ったばかりだった。これを読んで,また未読あるいは未再読の乱歩作品を読んでみたくなった。この本の魅力は,こうして読書の楽しみが拡がっていくところにもある。

私は鎌倉生まれでも鎌倉在住でもないが,八幡宮近くの小中学校に通っていたので,鎌倉は身近な土地だ。だから,随所にちりばめられている鎌倉の風景描写を見ると,その光景が写真のように鮮明に目に浮かぶし,懐かしいことを様々に思い出したりするのも楽しい。そんなところも,私がこの作品を好む理由と言えよう。


AndroidアプリのO'REILLY本が安い理由 [本]

O'REILLY「Perl Best Practices」。

昨日,O'REILLYの電子書籍が安い,ということについて褒め称えたばかりだが,ちょっと事情が分かってきた。

「Perl Best Practices」という本が欲しいと思って,Google Playを探したのだが見つからず。それではと,iTunesストアでも探してみたところ,以前あったはずのO'REILLY本が悉くなくなっている。ググってみたところ,「Perl Best Practices」も,以前はiTunesストアで販売されていたのは確かなようだ。撤退してしまったのだろうか。

もしかして本家の方で直接扱っているのではないかと,O'REILLYのHPへ行ってみたところ,やはり電子書籍を販売していることが分かった。しかし,値段が高い! 本のボリュームにもよるが,基本的に1冊$30前後はするようだ。iTunesストアやGoogle Playでの安値は,O'REILLYの意向という訳ではなかったのか。Kindle版のO'REILLY本の値段が高い理由が分かった気がする。

そして,もう一つ気付いたことは,先日購入した「Intermediate Perl」には,昨年出たばかりの2nd editionが存在しているということ。Google Playで購入したのは1st editionだった。念のため,他の本も確認してみる。「Learning Perl」の最新版は第6版で,Google Playは第5版。なるほど,Google Playで売られていたのは,古い本だったのか。以前の,iPhoneアプリもそうだったのだろう。確かに,最近出た本がラインナップにないとは思っていたのだが。まぁ,安いので諦めも付くが,既に新しい版が出てると思うと,ちょっと悲しい。うまい話には落とし穴があるということか。

とはいえ,出版年月は少し古くても,まだ最新版のままのものも多くあるようなので,そういうのを選んで買うのは良いかもしれない。「Perl Cookbook」なんかがそうだ。すぐに新しいのが出る可能性がないとは言えないが。また,対象のソフトウェアに,最近大きな仕様変更があったのでなければ,旧版で充分な場合もあるだろう。何しろ値段が安いので,あとは個人の価値観の問題だ。しかし,アプリの説明のところには特に明記されていないので,紛らわしいことは否めない。後で旧版だと気付いて,怒り出す人もいるかも。書籍と比べれば安いといっても,アプリにはもっと安いものもたくさんある訳だから。

それにしても,O'REILLY本家HPでの販売価格は,ちょっと高いなぁ。Kindleストアよりもだいぶ高い。Kindle版もDRM freeなのかは分からないけどね。先の「Perl Best Practices」は少し古めの本だけど,Google Playにはないので,Kindleストアで試しに買ってみようかな。


恐るべき冤罪の創出過程 [本]

冤罪と裁判 (講談社現代新書)
「冤罪と裁判」(講談社現代新書)

書店を流していて,興味深いタイトルが目についた。「冤罪と裁判」という講談社現代新書の1冊。手に取ってみると,冤罪と思われる実際のケースが,それぞれ詳細に紹介されている。面白そうなので,(書店ではなく)hontoですぐに注文した。

まだ読み始めて数十ページなのだが,いきなり衝撃的な例の連続。決して遠い過去の話ではなく,2000年以降のこと。いかに不適切で違法な取り調べが,警察によって行われているかが分かる。勿論,著者がその場にいて見聞きした訳ではないから,全てがありのままの事実なのかは分からないが,弁護士の方なのでそこそこ信憑性があると考えて良いだろう。驚くべきは,逮捕状のない,任意の取り調べに強制連行することがあるということ。これは明らかに,職権逸脱の違法行為だ。恐らく,この強制連行に下手に抵抗すると,伝家の宝刀,公務執行妨害を適用して逮捕するのだろう。それすらも視野に入れて,敢えて手荒なやり方をするのだと思われる。そして,連行したあとは,任意なのにも関わらず,帰宅を許可しない。これって,警察による誘拐・監禁行為ではないか? 取り調べにあたっては,刑事は大声を出し,暴言を吐き,机を叩いたりするなどして,威嚇して脅すのだ。しかも,相手は,犯罪組織などの構成員ではなく,一般市民だ。勝手に警察が犯人だと思い込んでいるだけで,実際は善良な一市民なのである。

この恐喝まがいのやり方に屈して,虚偽の自白をしてしまう人がいる一方で,違法性を盾に応じないと,人権を無視したとんでもない捜査をする。まだ立証もされていない罪を,被疑者の親族・知人や関係する組織などに吹聴して周り,煩わせる。その結果,結局立件できないとしても,被疑者の社会生活を破壊する。そして,そこには無責任なマスコミの報道も介在する。

こうしたことは,ある程度想像していた範囲ではあるのだが,実例として突きつけられると,背筋が凍るような気分だ。TVの刑事ドラマよりもよっぽど酷い。任意の事情聴取など応じる必要がないと思っていたのだが,強制連行があり得るとは。そして,その違法性を訴える先がないというのがおかしい。弁護士が抗議してもダメってどういうことなんだ? 日本の警察組織は,ここまで腐っていたのか。そりゃ,日々本物の犯罪者とばかり関わっていたら,人間不信にもなるのかもしれないが,人間を信じられない連中が,正義を預かるなんて,正気の沙汰ではない。警察に目をつけられたら終わり,なんて,近代国家として恥ずべきことなのではないだろうか。

いつも書いているが,こうしたことは,決して他人事ではない。何しろ,冤罪なのだから,罪を犯してないからといって無関係とは言えないのだ。果たして,現状の日本の司法制度で,個人が警察に立ち向かうための有効な手段があるのだろうか。この本からそうした洞察が得られるかは分からないが,冤罪に導かれるパターンを,多くの実例から学んでおく意味はあるだろう。

これから読み進めるのが,楽しみであり,恐怖でもある。


江戸川乱歩再読 [本]

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)
江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者(光文社文庫)

小中学生の頃は,かなりの読書家であった。学校の図書室や地域の図書館に入り浸っては,手当たり次第に読み耽っていたものだ。精神面の成長において,それはそれで良い効果があったとは思うのだが,弊害のようなものも実はある。一度読んだ本を繰り返して読むことをしない人だったので,当時読んだ本はその時の記憶のままなのだ。といっても,筋をすべて憶えている訳もない。記憶といっても,読んだ時の印象としてしか残っていないのだ。

以前,友人と話していた時に,当時愛読した本の話題でひとしきり盛り上がった。その時挙がった中で,ふと気になったのが,シリーズをひと通り読んだはずの,江戸川乱歩の作品である。

江戸川乱歩の作品は,天知茂が主演の明智小五郎ものをTVドラマでやっていたりしたくらいなので,本来は大人向けの小説であるはずだ。ドラマをちゃんと観たことはないのだが,江戸川乱歩と言えば,「エロ・グロ」ということで有名なようなので,そのまま子供に読ませていたはずがない。微かな記憶を掘り起こしみると,児童書のように,かなり平易な文体で書かれていたように思える。とすると,当時読んでいたのはなんだったのだろうか。

不思議に思ってWebを検索してみたところ,どこの図書館にも必ずずらっと並べられていた,ポプラ社のシリーズは,子供向けにリライトされたものだということが分かった。なんと,江戸川乱歩が書いたものとばかり思っていたのは,別の人の手で書き改められたものだったのだ。今頃気付くのも間抜けな話だが,翻訳物や古文で書かれたものならいざ知らず,現代の日本語で書かれた作品を,わざわざ同じ日本語に書き直すなんてことがあるとは思ってもみなかった。実を言うと,江戸川乱歩の作品は,気味が悪くて,ほぼ全てを読んだとは言え,あまり好きではなかったのだ。しかし,大人になった今読んだら,印象がまた違うはずだし,そもそも子供向けに書き直されたものだったのなら,江戸川乱歩の本当の作品を読んでいないことになるのではないか。だとすると,釈然としない思いもする。ここはひとつ,オリジナル版を是非読んでみなければ。

そんな風に思って,まず手に入れたのが「妖虫」だ。タイトル通り,いかにも「妖しげ」で,江戸川乱歩らしいのではないかと考えたのである。しかし,読み終わっての感想は,あまり芳しいものではなかった。日本を代表する推理小説家の作品がこれ? 文体は確かに子供向けのものとは違うようだが,かといって格調高いものでもない。推理小説と言っても,現代の緻密なミステリーを読み慣れていて,刑事ドラマなどでも高度な科学捜査が行われていることを知っていると,隙がありすぎて楽しめないのだ。文学的な価値は別の所にあるのかも知れないが,推理小説の一読者としては,残念な感は否めない。

なんとなくすっきりしない気分のまま,もう少し調べてみると,江戸川乱歩の作品で評価されているものは,もっと初期のものらしいことが分かった。そこで,短編集を1冊購入してみることにした。光文社文庫の江戸川乱歩全集 第1巻,「屋根裏の散歩者」である。注文したのが届いてまず驚いたのは,なんとも分厚いこと。1冊1050円もするのだから,予想できないものでもなかったのだが,約740ページもある。収録されているのは,初期の短編が22編。それぞれの本編の後に,著者の解説がついているので,江戸川乱歩という作家を知るには,なかなか良い本と言えそうだ。

まずは,最初に収録されている「二銭銅貨」を読んでみた。30ページほどの作品なので,すぐ読めてしまうのだが,これがなかなか面白い。トリックやストーリー展開は,後から考えれば,無理があったり突っ込みどころも多いのだが,それを差し引いても,純粋に「読み物」として面白いのだ。続いて,評価の高いらしい,「屋根裏の散歩者」や「人間椅子」も読んでみたが,いずれもなかなか。両作品とも,異常な性癖の持ち主が主人公で,何とも異様な感じを受けるが,その反面,誰の心の内にも似たような欲望が秘められているような気がして,現実離れした異常性とは片付けられないように思えてくる。そして,その描写がまた生々しくて,真に迫るものがあるのだ。実は,これこそが江戸川乱歩作品の魅力なのではないだろうか。

恐らく,今回読んだ短編は,小学生の頃には読んでいないと思われる。「二銭銅貨」は,ポプラ社のシリーズにも収録されていたようだが,例によって全く記憶にない。もっとも,原作には出て来ない,明智小五郎が登場しているらしいので,若干内容が変わっているのかも知れない。いずれにしても,1冊読んだくらいで,簡単に決めつけてしまわないで良かった。評価されていると言うことは,それだけの理由があると言うことなのだろう。全てを読み直してみる訳にもいかないだろうが,あといくつか,評判の良さそう作品を読んでみようかと思っているところである。


反日視点の悪書「韓国と日本の歴史地図」 [本]

韓国と日本の歴史地図―民族の源流をたどる (プレイブックス・インテリジェンス)
「韓国と日本の歴史地図」(青春出版社)

溢れかえっている自室の本棚を整理していたら,こんな本が出て来た。「韓国と日本の歴史地図」。韓国の歴史ドラマなどを観ていた頃に,実際の韓国の歴史を全く知らないことに気付き,少し勉強しようと思ってた時に,書店で見つけて購入したのだったか。面白そうだと思って買ったのだろうけど,読んだ記憶がまるでない。韓国ドラマに興味を失いかけていたので,本棚に入れて,そのまま忘れてしまったのだろう。せっかく見つけたのだから,ということで,他にも積んである本はあるのだけど,ちょっと読んでみることにした。

結論から言うと,これは酷い本である。「はじめに」の書きぶりからして妙な感じがしたのだが,第1章第1節の最後の部分に,「日本のよけいな干渉がなければ,韓民族は独力で近代化をなしえた」と書かれていることで,確信した。この本は,明らかに,反日視点で書かれている。

韓民族が,本当に独力で近代化をなしえたかどうかは,今更証明しようのないことだ。特に証拠も根拠もないのに,客観的な歴史を語る上で,全く必要のない文章だ。韓国併合時,日本が莫大な予算を韓国に投じ,近代化を助けたのは紛れもない事実である。独力であったかどうかにこだわるのは,日本の助けで近代化したことが腹立たしいという反日感情そのものだ。「はじめに」の中で,「今後,日韓は...親しい関係を築いていかねばならない」などと書いているが,反日感情剥き出しの文章で,親しい関係を築く助けになるとでも思っているのだろうか。極めて愚かだ。

この他,全編にわたり,日本を誹謗するような文章が満載な上,何かにつけて,韓国の方が文化的に日本より早かったり,優れていると強調する文章が目立つ。一方で,韓国に分が悪い時は,「だからといって,韓国が劣っていた訳ではない」というような論調になる。しかも,ほとんどすべて,特に根拠を明示していない。単なる主観的な推量を述べているだけだ。いやしくも歴史を解説する本で,これはちょっと信じがたい。

最後の最後で,「儒教的合理主義」なんて書いてあったのには失笑した。どこが合理主義なのだ? 年長者が理不尽に威張り腐り,男尊女卑の精神が根付いていることは,元々は儒教文化から来ているものだろう。韓国人を,儒教的合理主義などと呼べる人間は,韓国の外にはいないのではないか。

その他気になったのは,韓国の地名や人名のふりがなが,日本語読みか韓国語読みか統一されていないところ。どちらにすべきかの議論はさておき,統一するのが当たり前だろう。個人的には,日本人に韓国文化を理解させようと思うのなら,韓国語読みにすべきだとは思うが。「り・しゅんしん=李舜臣」,「り・しょうばん=李承晩」,「あん・じゅうこん=安重根」なんて読み方を憶えて,何の役に立つのか。韓国に行ってそんな発音をしたって,まるで通じないのだから。

著者の武光誠という人は,大変な多作家であるそうだ。もっとも,全てを自ら書いているのではなく,弟子などに自分の名前で書かせている,という噂もある。なるほどね。日本人がこんな国賊紛いの文章を書くとは,まず思えない。恐らく,在日朝鮮人の弟子にでも書かせたのだろう。反日教育で刷り込まれる,典型的な日本観だからだ。実際,韓国から日本に留学に来るような優秀な学生なら,もっとまともな歴史観を持っている。

はっきり言って,こんな本を読むのは時間の無駄である。余程温厚な日本人でも,不愉快になることは間違いないので,精神衛生上もお勧めしない。私も,買ってしまった物だからこそ,我慢して最後まで読み通したようなものだ。図表や知らなかった歴史上のイベントが少しは参考になったが,こんな偏った書き方の本では,時代背景等,もろもろ信憑性が低い。実際,韓国の歴史ドラマなどで見知っているところと,食い違いがあるものもある。結局,他の文献に当たって確認しなければいけないのだから,有難味は薄い。せいぜい,このブログのネタに出来たくらいだろうか。

考えてみれば,タイトルからして「韓国と日本の」と,韓国を先に書いてるものね。そりゃ,韓国中心の内容ではあるのだけど,それなら同列に列挙する必要はない。日本では「日韓」というのに対し,韓国では「韓日」という。韓国人らしいタイトルだわな。