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「ヤマザキパンはなぜカビないか」の嘘 [時事/評論]

ヤマザキパンはなぜカビないか―誰も書かない食品&添加物の秘密
渡辺雄二による,件の本。

ヤマザキのパンとかお菓子って,賞味期限が切れたあと長いこと放っておいても,カビひとつ生えないことを不思議に思っている人は多いだろう。きっと,防カビ剤やら防腐剤を大量に使っているのだろうと思っていた。それに関して,知人からちょっと興味深い情報をもらった。

ヤマザキでは,臭素酸カリウムという物質を,パンの製造工程で使用しているというのだ。臭素酸カリウムは発がん性のあることが知られている物質であり,諸外国では食品に添加することを禁止しているところが多いらしい。日本においても,製パン以外に使用することは禁止されている。製パンの場合は,生地の段階で添加されるため,焼成の過程で消えるから大丈夫,という論理らしい。

私は全然知らなかったのだが,それに関しての騒動が以前にあったらしい。発がん物質を食べ物に使うなんて言語道断である。ヤマザキのパンにカビが生えないのは,そんな毒性の高い物質を使っているからだ...というような話。最近も,どこかのブロガーがそういう論調の記事を掲載したらしい。

それをちょっと読んでみたのだが,どうも違和感があった。確かに発がん物質を使っていることに賛成は出来ない。しかし,カビが生えないことが,人に害のある証拠といえるだろうか。そもそも臭素酸カリウムは防カビ剤として機能するのだろうか。ヒトに対する発がん性と,カビに対する毒性は,必ずしも一致しないと思うのだが。

この話,元々は,科学ジャーナリスト(?)の渡辺雄二という人が,著書の「ヤマザキパンはなぜカビないか」の中に書いたことらしい。なんとかジャーナリスト,なんていう人種は端から信用していないので,既に胡散臭い。しかもこの御仁,以前話題になった「買ってはいけない」の著者の一人であることが分かった。ますます胡散臭い。こういう人たちの言葉を鵜呑みにするのは危険である。日本人は,どうもその辺り,ガードが甘すぎる。

私も専門家ではないので,何が正しいのかを証明することは出来ない。しかし,調べてみたところ,臭素酸カリウムというのは防カビ剤ではないようだ。これは別に驚くようなことではない。ヒトに毒だからといって,全ての生物に毒だとは限らないのだ。しかも相手はカビである。また,鈴鹿医療科学大学の長村洋一教授が書かれた記事によれば,焼成後もパンには0.5ppb(=10億分率)以下の臭素酸カリウムが残留している可能性はあるそうだが,そんな極めて微量の物質が,防カビ効果を発揮できるとは常識的にも考えられない。件の本を読んだわけではないが,長村教授によれば,およそ非科学的な論理で,臭素酸カリウムを犯人に断定しているらしい。

それなら何故カビないのかというと,衛生的な環境で,カビの菌や胞子などが混入しないように製造されていること,パンにカビの生育しにくい何らかの工夫がされているらしい,とのことだ。これはこれで,眉唾な感じはするが,少なくとも,家庭で素手を使って作ったり加工されたりするパンより,衛生的なのは間違いないだろう。家庭のパンがすぐにカビるからといって,カビないメーカー製のパンはおかしいと言うのは,あまりに短絡的である。街のパン屋であっても,棚にカバーもかけずに長時間放置されているのだから,メーカーの工場で袋に詰められるパンより,不衛生なことは否定出来ない。というか,私は神経質な方なので,実はいつも気になって仕方ないくらいだ。

私は,ヤマザキが臭素酸カリウムを使用することを,擁護するつもりはない。ただ,理不尽な論理で,感情的に悪者扱いすることも善しとはしない。ヤマザキ側が言うように,パンに向かない国産小麦を使って美味しいパンを作るのに,臭素酸カリウムが必要なのだ,というのが事実であれば,何でも国産の方が良い,と考える世の中の風潮にも問題があるとは考えられないか。そもそも,国産品信仰なんて,マスコミがそう仕向けたのだろう? マスコミの言うことに騙されやすい日本人が,何の疑問も持たずに信じこんでしまっただけだ。無理に国産小麦を使わなくても,輸入物の小麦でパンを作れば良い。皆がそう考えれば,ヤマザキも臭素酸カリウムを使う必要はなかったのではないか。輸入小麦の安全性に問題があるという意見があるかもしれないが,では臭素酸カリウムを使ったパンとどちらがより安全なのだろうか。多少不味くてもいいから,臭素酸カリウムを使わない国産小麦のパンを食べたい,という人がいてもいい。でも,どの程度危険なのかどうかもわからない臭素酸カリウムの残留など気にしないから,美味しいパンを食べたいという人だっているだろう。それは個人の選択だ。自分にとってのメリットとリスクを評価して,自分に最も適したものを選べば良いだけだ。他人の選択に対して,それは危険だから食べるのをやめなさい,なんていうことは大きなお世話である。

勿論,そのためには,正しくリスクを評価するための情報が提示されていることが前提条件となる。だから,建前上残留していないから,という理由で,臭素酸カリウムの使用を表示していなかった(未確認だが,今はされているらしい)のは,重大な問題である。ヤマザキが責められるべきはその点においてであって,これについては弁解の余地はない。加担した厚生労働省も同罪だ。

しかし,ここで私が何より問題にしたいのは,カビが生えないことを臭素酸カリウムのせいにして,世間を欺いた前出の科学ジャーナリストである。いやしくも「科学」などと名乗る以上,科学的な裏付けもないことをさも真実のように論じるのは,詐欺師と言われても仕方のない行為だ。例えそれが,臭素酸カリウムの危険を告発するためのものであっても,嘘を言ってはダメなのだ。不誠実なことを,不誠実なやり方で批判するのは間違っている。ひとたび嘘が露見したとき,果たして誰がそんな人間の言うことを信じるだろうか。正当な主張でさえ,疑いの目で見られてしまうのだ。大衆はバカだから,嘘に気付かないとでも思っているのか? あるいは,一時的に注目が集まって,それで利益を得られれば満足なのだろうか。人の噂も七十五日。ほとぼりが冷めた頃に,また同じようなことを繰り返すつもりなのだろうか。

日本人は,ジャーナリズムに対して,もっと警戒心を持つべきだ。現在のジャーナリズムからは,本来の使命や機能は失われ,単なる私的営利活動に成り果てている。社会が正常に機能するためには,それでは困る。立て直すためには,国民の目で,厳しく監視していくことが必要なのである。

なお,長村教授の前出の記事やその続編,畝山智香子氏の記事によると,パンのカビは思ってた以上に怖いらしい。パンに目に見えるカビが発生したら,目に見えないカビもすでに大量発生しているのだそうだ。これからの梅雨シーズン,ちょっと油断するとカビを生やしてしまいがちだが,勿体ながらずに処分するのが賢明なようだ。


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